SARS-CoV-2によるCOVID-19(コロナウイルス疾患2019)パンデミック:血友病を患う方々への実際的な推奨事項

世界血友病連盟(WFH)医療諮問委員会(MAB*および製品の可用性、安全性、および供給に関するWFH委員会(CPSSA**:

*医療諮問委員会(MAB)メンバー:Greig BlameyAmpaiwan ChuansumritSaliou DiopVincent DumezMagdy El EkiabyCedric HermansAlfonso IorioRadoslaw KaczmarekKate KhairSteve KitchenBarbara KonkleEd KueblerDeclan NooneFlora PeyvandiSteven PipeJeff StonebrakerGraeme TingAlain Weill、およびGlenn F. Pierce会長

**CPSSAメンバー: Magdy El EkiabyDan HartMarion KoerperMike MakrisBrian OMahonyDavid PageFlora PeyvandiGlenn PierceThomas SanniéUwe SchlenkrichMark SkinnerAlok SrivastavaCraig Upshaw、およびRadoslaw Kaczmarek会長

現在、標準型または延長型組換え半減期FVIIIまたはFIX濃縮物、FEIBAFVIIa、またはエミシズマブで治療されている血友病を患う方々(PWHの場合:

  1. 推奨されている治療計画を変更する理由はありません

  2. 現段階で治療用品の不足、製造上の問題、またはサプライチェーンの中断を恐れる理由はありません

  3. 自宅または病院での在庫が限られている場合は、血友病治療センター(HTC)にお問い合わせください

  4. 自宅で治療する場合、妥当な必要数を超える交換製品を注文しないでください。ただし、遅配や混乱が生じた場合のために、家庭で使用するのに多少余分の用量を確保しておくことが賢明です。

血漿由来のFVIII/FIXで治療されている血友病を患う方々(PWHの場合

  1. 採用されているウイルスの不活性化および除去手技は、SARS-CoV-21のような脂質膜エンベロープのウイルスを破壊するのに十分です。

  2. 製品の切り替えは推奨されません

  3. 今日までのところ、血漿由来製品の供給中断は検出されていません。一番の懸念事項は、現段階での血漿由来製品生産のフロントエンドにおける血漿採取の減少です。2,3 

  4. 献血および血漿献血は引き続き安全なプロセスであり、血漿献血の必要性は従来通り大きなものがあります。パンデミック中に血液と血漿の適切な供給を維持するには、現在および新規のドナーの支援が依然として重要です。

  5. すべての血友病治療センター(HTC)と血液および血漿採取センターは、人員とドナーの両方を保護するために、ガイドラインに従って、呼吸器の飛沫や媒介物を介した人と人の接触によるSARS-CoV-2の拡散を防止するように喚起しています。4

  6. ウイルス不活性化されていない他の血液由来製品(例えば、クリオプレシピテート、血小板)で治療されている血友病を患う方々(PWH)の場合、治療の判断は、出血イベントを治療しないことの安全性と、別の感染を獲得する残りのリスクのバランスをとる臨床的リスク/便益解析に基づいて行う必要があります。

現在臨床試験中の血友病を患う方々(PWH)の場合(市販後試験を除く)5

  1. HTCに連絡して、パンデミックの影響について話し合います。

  2. 治験薬の入手可能性および治療が中断されていないことを確認します。

  3. HTCstudyチームとフォローアップ/モニタリングのモダリティについて話し合います。治験薬を投与する必要があり、危険な副作用を防ぐために対面モニタリングが必要な場合を除き、遠隔フォローアップ訪問が強く推奨されます。

  4. 遺伝子治療製品を最近受けた(注入後12か月未満の)血友病を患う方々(PWHの場合、予定されている肝機能検査は、安全性と有効性の目的で引き続き優先される必要があります。

  5. 治験チームからの指示がない限り、現在臨床試験治療を受けている場合は、治療を中止したり切り替えたりしないでください。

新しい治療法を試験する治験にすぐに登録される予定の血友病を患う方々(PWHの場合5

  1. 登録の延期については、治験チームと話し合う必要があります

  2. 多くの医療センターは、パンデミックに対処するために必要な医療資源をかき乱さないように、新規の臨床試験の開始を禁止しています。

血友病を患う方々(PWHCOVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2への暴露を減らすための具体的な対策

  1. COVID-19のある人の暴露を減らすためのすべての措置は、併存疾患(心血管疾患、高血圧、肥満、糖尿病、HIV、老年期)を有する、またはステロイドや他の強力な免疫抑制薬を使用するすべての血友病を患う方々(PWHにおいて、積極的に促進される必要があります。6,7

  2. リスクの低い個人や子供も含めて、あらゆる人の暴露を最小限に抑えることが、感染を避けるための最良の方法です。適切な場所に避難し、社会的距離を保つことが、最も重要なツールです。

  3. 病院やオフィスの医療専門家を訪問する必要性を最小限にします。緊急でない治療と待機的手術は延期されるべきです。

  4. パラセタモール(アセトアミノフェン)は、コロナウイルスとの戦いに必要な炎症反応を阻害することなく発熱を軽減し、出血性疾患のある人に推奨されます。

  5. パラセタモール(アセトアミノフェン)は、高用量では肝臓障害を引き起こすため、60mg/kg/日または3g/日を超えるべきではありません。

  6. イブプロフェンおよび他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、血小板機能の阻害により出血が増加する可能性があるため、通常は出血性疾患のある血友病を患う方々(PWHには勧められません。 さらに、特にイブプロフェンは、侵入受容体であるアンジオテンシン変換酵素の上方調節のため、COVID-19を悪化させるか、またはSARS-CoV-2の感染リスクを高めることが示唆されています。ただし、これを裏付けるエビデンスは現時点では限られています。8-10

  7. 忘れないでください。石けんで定期的に手洗いする、顔に触れない、咳をエアロゾル化しない、他の人から少なくとも2メートル(6フィート)の距離を保つなどの特定の衛生対策こそが、コロナウイルスの感染を防ぐ鍵なのです。

COVID-19感染症を患う出血性障害患者の入院の場合の具体的な措置

  1. 患者が入院している病院とHTCとの良好な連絡

  2. 補充療法の手配/静脈アクセスの確保。

  3. エミシズマブによる治療の場合は、チームに通知します(不慣れな医療専門家による止血検査の誤った管理や誤った解釈というリスク)。11

  4. リバランス剤(抗TFPIおよびフィツシラン)による進行中の実験的治療の一部であり、血栓症またはその他の凝固系の不均衡リスクがある場合、または最近、遺伝子治療を受けた場合は、通知します。その場合は、HTCと連絡を取ってください。

  5. COVID-19に感染している場合、一部の臨床医は、SARS-CoV-2よって生じた潜在的な重度損傷による肺への出血に対する予防策、そして出血を引き起こす可能性のある脳内の血圧上昇を引き起こす激しい咳こみ/鼻かみに対する予防策として、予防療法と高い凝固因子レベルを維持することを提案しています。この記述表明を裏付けるエビデンスを提供する症例報告があります。

ニュースは日々変化しています。WFH情報は必要に応じて更新されます。

参照資料

  1. Busch M, LM Katz, H Shan.Webinar: Update on the COVID-19 Coronavirus Outbreak: Blood Collection and Safety ImplicationsCOVID-19コロナウイルス大流行:採血と安全性への影響)。ISBT Education.03/04/20. https://education.isbtweb.org/isbt/2020/covid-19/289245/michael.busch.louis.m.katz.26.hua.shan.webinar.update.on.the.covid-19.html?f=menu%3D8%2Abrowseby%3D8%2Asortby%3D2%2Alabel%3D19776 2020319日にアクセス。

  2. 新型コロナウイルス疾患(COVID-19)リソース。https://www.pptaglobal.org/23-advocacy/access-to-care/1057-covid-1 https://www.pptaglobal.org/23-advocacy/access-to-care/1057-covid-19 2020319日にアクセス。

  3. New Coronavirus (SARS-CoV-2) and the Safety Margins of Plasma Protein Therapies新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および血漿タンパク質療法の安全マージン)。https://www.pptaglobal.org/media-and-information/ppta-statements/1055-2019-novel-coronavirus-2019-ncov-and-plasma-protein-therapies 2020319日にアクセス。

  4. van Doremalen N, Bushmaker T, Morris DH, et al.Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1.N Engl J MedSARS-CoV-1と比較したSARS-CoV-2のエアロゾルおよび表面安定性)。N Engl J Med.2020317DOI: 10.1056/NEJMc2004973.

  5. FDA Guidance on Conduct of Clinical Trials of Medical Products during COVID-19 PandemicCOVID-19パンデミック中の医療製品の臨床試験の実施に関するFDAガイダンス)。https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/fda-guidance-conduct-clinical-trials-medical-products-during-covid-19-pandemic 2020319日にアクセス。

  6. Zhou F, T Yu, R Du.Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study.(中国武漢におけるCOVID-19の成人入院患者の死亡率の臨床経過と危険因子:後向きコホート研究)。The Lancet.202039日オンライン出版。DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30566-3

  7. Fang L, G Karakiulakis, M Roth.Are patients with hypertension and diabetes mellitus at increased risk for COVID-19 infection?(高血圧および糖尿病の患者はCOVID-19感染リスクが高いか?)Lancet Respir Med 2020.Published Online March 11, 2020 DOI: https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30116-8

  8. EMAは、COVID-19の非ステロイド系抗炎症薬の使用に関するアドバイスを提供します。https://www.ema.europa.eu/en/news/ema-gives-advice-use-non-steroidal-anti-inflammatories-covid-19 2020319日にアクセス。

  9. Voiriot G, Q Philippot, A Elabbadi , C Elbim4, Martin Chalumeau, M Fartoukh.Risks Related to the Use of Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs in Community-Acquired Pneumonia in Adult and Pediatric Patients.(成人および小児患者の市中感染肺炎における非ステロイド系抗炎症薬の使用に関連するリスク。)J. Clin.Med.2019, 8, 786; doi:10.3390/jcm8060786

  10. Legras A, B Giraudeau, A-P Jonville-Bera, et al.A multicentre case-control study of nonsteroidal anti-inflammatory drugs as a risk factor for severe sepsis and septic shock.(重症敗血症および敗血症性ショックの危険因子としての非ステロイド系抗炎症薬の多施設共同症例対照研究。)Critical Care 2009, 13:R43 (doi:10.1186/cc7766).

  11. Adamkewicz JI, DC Chen, I Paz-Priel.Effects and Interferences of Emicizumab, a Humanised Bispecific Antibody Mimicking Activated Factor VIII Cofactor Function, on Coagulation Assays(凝固アッセイにおける、活性化第VIII因子補因子機能を模倣するヒト化二重特異性抗体であるエミシズマブの効果と干渉)。Thromb Haemost 2019; 119(07): 1084-1093.DOI: 10.1055/s-0039-1688687

興味のあるウェブサイト

https://www.cdc.gov米国疾病管理予防センター

https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019 および https://www.who.int/health-topics/coronavirus  世界保健機関(WHO)

https://www.ecdc.europa.eu/en/novel-coronavirus-china EU疾病予防管理センター

https://www.nih.gov/health-information/coronavirus 国立衛生研究所

https://www.worldometers.info/coronavirus/ グローバルデータ

https://www.nejm.org/coronavirus New England Journal of Medicine抄録

https://www.pptaglobal.org/23-advocacy/access-to-care/1057-covid-19 血漿タンパク質治療協会

https://www.isbtweb.org/ 国際輸血学会(ISB)